夫婦生活がうまくいかなくなったとき、何がいちばんつらいのか。それは“行為そのものがないこと”ではなく、「自分がパートナーにとってどういう存在なのか分からなくなる瞬間」です──。
この記事では、結婚7年目の30歳の女性・里奈(仮名)が夫の真一(仮名)から「もう女として見られない」と告げられたことをきっかけに、揺れ続けた心と離婚までの道のりを語ります。
誰にも打ち明けられなかった胸の痛み、葛藤、そして“自分を取り戻すまで”の静かな戦いを、丁寧に追っていきます。
「女として見られない」と言われた夜
パート主婦の里奈(30)は、結婚7年目。
夫の真一は帰宅後すぐに「眠い」と言って寝室へ向かおうとする。里奈は、その背中を毎晩見送りながら心のどこかが冷えていくのを感じていた。
その晩だけは違った。
「ちょっと話があるの」
そう呼び止めると、真一は渋々振り返った。
里奈は、直球で切り出した。
「私たちの夫婦生活について、どう思ってる?」
7年間で、回数は片手で数えられるほど。最後に触れ合ったのは3年前。
里奈は2人目の子どもが欲しかったが、誘っても無視され、時には怒鳴られることもあった。
「真一は私をどう思ってるの?」
震える声で尋ねた瞬間、返ってきた言葉は予想を遥かに超えていた。
「……もう女として見れない。
それに、性欲もほとんどない。特に里奈は無理なんだ。家族としてしか見られない」
胸の奥が崩れ落ちるような衝撃だった。
“家族だから”という理由で拒絶される、その苦しさ。
“女として否定された”という痛みは、しばらく呼吸を整えられないほど深かった。
「性欲強いよね」と言われた瞬間、心が折れた
里奈が「体も愛されたい」と正直に伝えると、真一はため息をつきながら言った。
「里奈って、前から思ってたけど……性欲強いよね。
30なんだから、少しは落ち着けば?」
里奈の胸に刺さったのは、その“うんざりした表情”だった。
性への価値観は人それぞれ。でも、求める気持ちを“悪”のように扱われるのは、ただの否定だ。
「一人で処理すれば?」
「女性用のグッズでも使えば?」
最終的にかけられたのは、突き放すような言葉だった。
里奈はその瞬間、夫婦としての未来が見えなくなったという。
親友の離婚を聞いて知った「解放」と「孤独」
そんなある日、高校時代の親友奈津美から突然電話があった。
「実は……離婚したの。原因は、性の不一致」
奈津美は、夫と10年連れ添いながらも、産後から性行為が苦痛になっていた。
夫は風俗へ通うようになり、問い詰めたことで夫が泣き出したという。
「私は彼を解放しようと思ったの」
そう語る奈津美の声は、どこか吹っ切れたようで、どこか寂しげだった。
しかし里奈は思わず言ってしまった。
「離婚で“解放”されるって、相手はそう思ってないかもしれないよ。
私も、“あなたとはできない”って言われた側だから……分かるの」
里奈が胸の奥に押し込んできた痛みを、初めて言葉にした瞬間だった。
「愛されてるって実感したいだけなのに」
奈津美との会話で決心した里奈は、もう一度真一と向き合うことにした。
しかし返ってきたのは、以前と同じ拒絶。
「寄り添うって……結局はやってほしいってことだろ?」
「スキンシップ増やしたら、また誘ってきそうで嫌なんだよ」
里奈が求めていたのは、行為ではなく“繋がり”。
手をつなぐ、抱きしめられる──
ただ“自分は大切な存在なんだ”と実感したかっただけだった。
しかし真一は最後まで、そこに気づくことはなかった。
「もう同居人でいい」──静かな決別
里奈はある夜、静かに心の中で別れを決めた。
「家族なら愛情がなくてもいいの?
そんな都合のいい家族はいらない」
その日から真一とは“同居人”として接し、離婚に向けて準備を始めた。
パート先の正社員試験にも合格し、住む家を探し、少しずつ荷物をまとめていった。
3ヶ月が過ぎた頃、ついに家を出る日が来た。
「離婚してください」
娘の波瑠と一緒に玄関を出た瞬間、里奈は深く息を吸った。
「たかがレスで離婚?バカかよ!」
背後で真一が叫んでいたが、里奈の心はもう揺れなかった。
「私も、もうあなたを“男性”として見られないから」
その言葉に真一は絶句した。
離婚後に届いた“まさかのメッセージ”
離婚成立後、真一から届いたのは嫌味のようなメッセージだった。
「レスで離婚したなら、今は男遊びしてるんだろ?」
「尻軽が母親なんて、波瑠がかわいそう」
里奈は静かに返信した。
「次にこのようなメッセージを送るなら、警察に相談します」
それ以来、連絡はほとんど来なくなった。
離婚してからの里奈は、働きながら波瑠を育て、忙しいが充実した日々を送っている。
“あの夜の言葉”に縛られることも、もうなかった。
そして今、こう振り返る。
「長年一緒にいても、人の本性は分からないもの。でも、自分を押し殺して生きる必要はないんだ」
まとめ:セックスレスは“行為がないこと”だけが問題ではない
この体験談が伝えているのは、
セックスレスは「性の問題」ではなく「関係性の問題」であるということ。
・求めても拒否され続ける苦しさ
・気持ちを伝えても軽く扱われる悲しさ
・“家族だから”と愛情表現すら避けられる孤独
どれも、誰かに話しづらい。でも確かに存在する痛みです。
この記事が、同じように悩む人が自分の気持ちを責めずに済むための小さな光になりますように。


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